オレンジハウス

分類 老人短期入所施設
建設地 茨城県土浦市
構造 S造 2階建て
敷地面積 1,066.15㎡
延床面積 498.09㎡
竣工 2013年3月
業務内容 新築設計監理
設計担当 佐藤昌樹
WEBサイト オレンジハウス

土浦市荒川沖にある広い敷地に建てられた、白い外壁の2階建てです。
広大な庭には、オレンジやレモンの木が規則的に植えられ、その光景はまるでスペインや南フランスの農村のよう。手入れのいき届いたその庭に調和することを最優先して計画された建物です。
なかなか瀟洒な雰囲気に仕上がり、私自身も満足しています。

…ところで、この建物、何の用途で建てられたものだと思いますか?
じつはこれ、「デイサービス」、つまり、高齢者用の介護施設なのです。

介護施設なのに、ヨーロッパのまち並み……?!
この施設のオーナーは、同じ敷地内で皮膚科のクリニックを営む医師で、かつ、レストランのオーナーでもあります。そして、お付き合いしてみてわかったのですが、無類の「建築好き」というか、建築物を建てることが、自身の「趣味」や「遊び」も兼ねているような方です。

そのオーナーから、施設をつくるにあたって私に出された要望は、次のようなものでした。「この庭を活かした家をつくってほしい。いや、というか、むしろ”家つきの庭”をつくってほしい」

そして、もうひとつ、
「ヨーロッパのまち並みのような雰囲気をここにつくりだしてほしい」

介護施設なのに、ヨーロッパのまち並み……?!
当初はなかなか私のなかでもイメージが定まらず、正直苦心しました。
が、何度かスケッチをもとに打ち合わせをするうちに、次のように心が決まりました。

・まずは、オーナーのご希望に十分に応える建物とする。

・外観と内部が乖離しない建物とする(外観だけヨーロッパ風で内部はふつうのデイサービス、というものにはしない)

・介護する側の利便性を最優先して全体を構成することはしない(想定する利用者の快適性を優先する)

上記のように決め、オーナーと密度の濃い打ち合わせを重ねながら、イメージを細部までつめていきました。

技術的な苦心を重ねたからこその、「自然さ」「何気なさ」
この建物のイメージの具現化には、いろいろな部分でかなり手がかかり、非常に苦心しました。

何気なく見えているものが、じつは、技術的に苦心を重ねた結果であったりします。

たとえば、窓。
この施設の窓は、防犯上すべてシャッター付きです。
しかし、外観にシャッターボックスが見えてしまっては、建物の”表情”が生きてこないだろうと考え、試行錯誤した結果、壁を厚くし、シャッターボックスを壁の中に格納することで、外からはまったく見えない設えを実現することができました。

同様に、給排気口なども、通常はもっと外に出るものなのですが、この施設では外からはまったく目に入らないよう、軒裏に仕込んで隠しています。

これらひとつひとつのことに、細かく対応し、余計なものを見えなくすることで、ようやくオーナーが求める「ヨーロッパ的な雰囲気」の外観にたどり着くことができました。

「デイサービス」施設のひとつの深化形として
施設の正面玄関には、存在感のあるアールデコ調のキャノピー(庇)が備えつけられています。これは、ロートアイアン(鋳物)の工場を探して、わざわざオーダーしてつくってもらったものです。イメージは、パリの地下鉄の入り口にあるようなキャノピー。「できればフランス人になりたかった!」という語るオーナーのためにデザインしました。

内部の階段の手すりなども、同じロートアイアンでオーダーしたものを設置しています。
このほかにも、内装の材料には質のいいものを揃えており、それらが、施設の内部全体にシックで深みのある印象を醸しだしています。

建物の西側には、八角形のサンルームがあります(オーナーが希望する「まち並み」の雰囲気を創出するため、サンルームの外壁にはポップな配色を用い、建物全体の外観にリズムが出るよう工夫しました)。

このサンルームに座り、お茶を飲みながら、オーナー自慢のオレンジやレモンの木が植えられた庭を眺めていると、その気持ちのよさに、文字通り時が経つのを忘れてしまいそうになります。デイルームには暖炉もあるので、寒い季節には、優しい炎を囲みながら会話がはずみそうです。

体は少々弱っているけれど、知力は衰えていない高齢の方々に、「家で過ごすよりも、ここで過ごすほうが快適」と、お友達同士誘い合い、ゆったり利用してもらえる場──それがこの「オレンジハウス」です。

そう、各所に効果的にあしらわれた「オレンジ色」は、オーナーがもっとも好きな色です。
施設名が「オレンジハウス」に決まったと聞いたときは、だいぶストレートなネーミングだなと思いましたが、今は、わかりやすく、親しみやすく、フレッシュな響きが、この施設にぴったりだなと私自身も愛着を感じています。

「オレンジハウス」を通じて、「デイサービス」のある意味深化したかたちを提示することができました。機会を与えてくださったオーナーに心から感謝しています。

分類 老人短期入所施設
建設地 茨城県土浦市
構造 S造 2階建て
敷地面積 1,066.15㎡
延床面積 498.09㎡
竣工 2013年3月
業務内容 新築設計監理
設計担当 佐藤昌樹
WEBサイト オレンジハウス