開江老人ホーム
分類 | 社会福祉施設 |
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構造 | S造 平屋建 |
延床面積 | 1,015.51㎡ |
竣工 | 2014年 |
業務内容 | 増床・耐震補強設計監理 |
設計担当 | 池田洋 友常奈津子 亀田駿介 |
水戸市双葉台にある市営老人ホームの耐震工事と増築工事です。
耐震工事については、耐震調査を行った結果、補強が必要な箇所は本館の1ヵ所のみであることがわかりましたので、強度が低い開口部を壁に変更する補強工事を行うことで解決することができました。
一方、増築についてはなかなか難しい条件をクリアする必要がありました。
というのも、既存施設が建つ敷地がもともとかなり高低差のある土地だからです。
増築を敷地のどの部分に計画するか。
北側の高い土地にある駐車場スペースをある程度減らしてそこを使うか、あるいは、南側の低地にある細長い敷地を使用するか。もっとも快適な施設環境を得られるのはどちらの案かを、エイプラス・デザインの中でも幾度もシミュレーションして議論を重ねました。
結果的には、「駐車場スペースはつぶさずにできるだけ確保しておきたい」という施設側のご希望、そして、南側の低地は細長いけれど、調整池に面していて桜の木々が敷地沿いに並び、池には水鳥が飛来する良好な環境であることを考え合せ、南側の低地を選んで居室を増築することにしました。
老人ホームというと、お年寄りが苦労をせずに生活できるようなるだけ動線を短くするという考え方が一般的かもしれません。
しかし、前述の通り今回の土地は池に沿った細長い形をしています。そこに居室棟を建てるとなると、必然的に横一列に居室が並ぶ建物となり利用される方の動線は長く単調になります。
そこで、私たちは、ところどころに「たまり」のような場をつくることを計画しました。既存の建屋にも「たまり」があり、そこに利用者の皆さんが部屋から出てきて集うことがあると聞いたので、この増築棟でも十分に機能するはずと考えました。
「たまり」は、食堂からこの居室棟に向かった突き当りにまず一ヵ所。それから、居室が並ぶ廊下に2ヵ所。計3ヵ所つくり、利用される方がちょっと集まって座っておしゃべりできるような空間となるようデザインしました。
居室棟の部屋はすべて一人部屋のため、「たまり」に来て水辺の桜や紅葉をながめながら皆さんとおしゃべりをすれば、きっと気分もリフレッシュすることでしょう。
もちろん部屋から「たまり」まで日常的に廊下を歩けば、効果的なリハビリとなります。
廊下には安全のための手すりも設置してありますので、「たまり」まで歩いていこうという気持ちを保っていただきやすいのではと思います。
居室棟の増築に伴い、利用される方の人数も増えるため、食堂とお風呂も新しくしました。
食堂は、食事だけでなくお楽しみ会をするときの部屋としても使うため、ステージこそ設けられなかったものの、催しものの背景となるよう一部分の壁の色を変える演出を施しました。
広いだけの部屋とならないよう、天井を三角形に盛り上げてリズムをつくって単調な空間にならないような配慮もしています。
これまでの食堂がかなり老朽化していたので、これからは明るくさわやかな空間のなかで食事を楽しんでいただけると思います。お風呂場や洗面台についても、これまでにエイプラス・デザインが福祉施設を多数手がける中で蓄積したノウハウを注ぎ込み、安全でより快適に利用していただける設計にしています。
ひとつ例を挙げると、車いす用の洗面台の位置があります。
たいていの場合、車いす用の洗面台は洗面台の列のいちばん端に設置されることが多いと思うのですが、エイプラス・デザインの場合はたいてい列の真ん中に設置します。
車いすを利用する人がみんなの真ん中で手や顔を洗う、ただそれだけのことですが、この洗面台の位置によって利用される方々の意識、施設内の雰囲気が確実に変わります。
建築が持つこういった力を、エイプラス・デザインではこれからも研究し、現場のデザインに生かしていきたいと思っています。
分類 | 社会福祉施設 |
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構造 | S造 平屋建 |
延床面積 | 1,015.51㎡ |
竣工 | 2014年 |
業務内容 | 増床・耐震補強設計監理 |
設計担当 | 池田洋 友常奈津子 亀田駿介 |