森の石窯パン屋さん

分類 商業施設
建設地 茨城県笠間市
構造 W造、2階建
延床面積 228.28㎡
竣工 2014年6月
業務内容 新築設計・監理
設計担当 佐藤昌樹
Web 森の石窯パン屋さん

ご主人のOさんは、笠間で古くからやっている「きらら館」という陶芸品を扱うお店の2代目。
とてもエネルギッシュで情熱的な、笠間のカルチャーをけん引する若きリーダーのひとりです。

そんな彼が、何がきっかけとなったのか、ある日「パン屋をやる!」と思い立ち、以来、持ち前の熱心さで全国のパン屋さんを200~300軒訪ね歩いて味や製法の研究を重ね、自らが営むパン屋を地元の笠間に建てる運びとなりました。
そのデザインをエイプラス・デザインにご依頼いただきました。

もともとパン屋さんを専門とする設計コンサルタントが関わっていて、この店の売りのひとつであるスペイン製の石窯の手配や、厨房に置く専用機材の配置などの計画は進んでいましたが、建物自体のデザインを個性的にしたいというOさんの要望があり、笠間の知人の紹介を経て、デザイン監修及びトータルコーディネイトの役目をご依頼いただきました。

敷地は「きらら館」のすぐ隣。小高い丘の上の、とても見晴らしのよい場所です。
この景観を生かさない手はないと考え吹抜けをつくって、道路に面した一部に2階部分を設け、10人ほどが座れるイートインスペースを作りました。
笠間の四季の景色を眺めながらパンを味わえるこのスペースは、石窯と並び、この店ならではの魅力のひとつとなっています。

この店舗を設計する際にエイプラス・デザインが果たした役割は、デザイン監修をしながら、必要なときにはOさんの要望を抑えるプロジェクト・マネージャーというものでした。

というのも、冒頭に記したとおり施主のOさんがとても熱い気持ちの持ち主なため、建てている間にも夢がどんどん膨らんでいき、それに比例して建築コストも上昇する一方だったからです。

膨らむ夢を実現するのも建築家の仕事のひとつです。
しかし、今回は、計画当初に提示された予算内になるべくおさめることに力を注ぎました。
なぜなら、当初の予算は事業の採算性から導き出した根拠のあるもので、新しい事業を始めるにあたってそれを大きく超えることは決して正解ではないからです。

予算を守るため、Oさんの膨らむ夢の中から「これとこれはあきらめましょう、かわりにこれはぜひやりましょう」という、まさに「選択と集中」の作業を何度も繰り返しました。
ときに抵抗を受けながらも説得を続け、結果、ほぼ当初の予算内で、とても愛らしい佇まいのパン屋さんが完成しました。

ご自身の理想から少しだけ後退するとき、施主の方には、それが90点になるのか80点なのか、それとも60点になってしまうのかが、なかなかわかりにくい。
建築の専門家であれば、「こうすれば85点だから、客観的にみるとほぼ変わりません」というアドバイスを行うことができます。
今回は、施主が非常に情熱的でアクセルを踏み込みやすい方だったこともあり、専門の知識と技術を持つ者として少しブレーキを効かせ、現実的かつ満足度の高いラインに着地できるよう心を配りました。

結果的に、森の石窯パン屋さんはたいへん成功して、連日、行列ができるほどの人気ぶりです。
Oさんのいいものを探し、生み出す努力には本当に頭が下がりますし、彼の熱いハートにもとても魅力を感じていますので、新しい事業が成功してこんなにうれしいことはありません。

自分のデザインした店舗を多くのお客様が訪れてくださることは、建築家にとっても、何よりもの幸せです。

ちなみに、「森の石窯パン屋さん」では、手作りのソフトクリームも販売していてそちらも大人気。
パン屋を探している間に日本一おいしいと思えるソフトクリームに出会ってしまい、それがきっかけで
研究しまくり、自分の店で販売するところまで行きついてしまったようです。

笠間に行かれた際には、ぜひ、2階のイートインで、石窯で焼いたおいしいパンととっておきのソフトクリームをゆっくりとお楽しみいただければと思います。

分類 商業施設
建設地 茨城県笠間市
構造 W造、2階建
延床面積 228.28㎡
竣工 2014年6月
業務内容 新築設計・監理
設計担当 佐藤昌樹
Web 森の石窯パン屋さん