泉町会館

分類 集会場
建設地 茨城県水戸市
構造 W造、2階建
延床面積 171㎡
竣工 2015年3月
業務内容 改修工事・監理
設計担当 佐藤昌樹
中村亮太

新しい時代を見据えて街を創る。そこに新しい泉町会館の未来が見えてくる。

建築家からみて泉町会館は
「残さなければならない」

耐震補強に始まり、昭和三十年の建物ですから、老朽化している部分を補強しました。今までは1階手前だけだった利用スペースを館全体で使えるようにしました。1階奥は水戸の土産品などを製造加工できる作業場として、トイレはバリアフリーに。泉町商店会の事務スペースだった2階は、市民も利用できるようにオープンスペースに改修しました。建築物としての特徴を活かして、吹き抜けを創り、開放感を演出するとともに、1階の奥まで陽の光が入るようにしました。建築当初からのアール型の独特のデザインと昔ながらの雰囲気はきちんと残しつつ、新しい素材を取り入れながら現代建築物としての街の人びとが利用したいと思えるような空間になったと思っています。

建築物というのは、ある一定期間少なくともそこに存在して、その蓄積がその街の一つの文化を形成していくものです。泉町会館は、さまざまな時代を経ながらも、こうして水戸の中心街に残っていること自体に大きな意味を感じています。

水戸の街が衰退と新陳代謝を繰り返す中で、哀しいかな、ただぼろぼろになっていく建物をたくさん目にします。そんな中で、泉町会館は構造的には確かに老朽化しているのですが、上手く朽ちているというか、上手く歳をとった建物という感じですね。あの場所にある事も非常に重要なのですが、建物の存在そのものをみんなで「残そう」としている熱さみたいなものが伝わってきて、「とにかく残さなきゃ」という、そんな気持ちで、この度改修工事にたずさわりました。

街を再生するための方法論は
「みんなの盛り上がり」

私の目指している街の再生は、非常に簡単明瞭です。「みんなの盛り上がりが必要」ということ。そこに住んでいる人、そこで生活をしている人、外から来て働いている人。その人たちの盛り上がりが一番大切だと考えています。

とかく、行政主導のまちおこしが失敗しがちなのは、住民みずからが盛り上がっていないところにあります。行政の手腕はもちろん必要ですが、行政が効果的な投資をするだけでなく、市民自らも少しずつ投資しながら関わっていくことが必要だろうと思っています。

みんなが共通の目標のようなものを持つことが必要で、それをどうビジュアルで見せるかが必要で、それをどう見せるかが私の役割だと思って、活動しています。いろいろな意見をもらって掌握して、修正しながら、みんなで向かう行き先をかたちにしていくというわけです。

具体的なイメージはまだ不鮮明ですが、たとえば、裏町みたいなところに着目して、補助金を集中的に投入する地域限定の条例を作る。わかりやすい例で言えば、現在、水戸市が進めている水戸城跡の歴史地区の整備。弘道館から水戸二中、水戸三高にかけて白壁を造り、櫓を立てるなど、見るからにわかりやすいですよね。

事例は、全国にたくさんあります。
栃木県の湯津上村(現・大田原市)は、街の色として古風な色使いで統一しています。セブン・イレブンでさえ、茶色。小さな自治体であれだけのことをやれるのは、大したものだと感心します。

静岡県の清水港では、ここ十年の間に観光客の数が十倍になりました。きっかけは、ある大学の女性教授が「色彩計画」というものを作って、街の人たちがそれを少しずつ「街としての色彩」として整えていったんです。石油タンクや鉄塔、ヤマダ電機の壁の色まで統一したくらいです。

素晴らしいのは、公共のお金は一銭も入ってなくて、みな自主的にやっているところ。最初は数人で渋々やっていたようですが(笑)実際にさまざまな場所で取り入れられるようになってくると、みんなの盛り上がりがむしろ「やらなくちゃいけない」雰囲気を創りだしていったんです。

日本人は、建物というのは「外観は自由」だと思っています。これは日本独特の建築に対する考え方かもしれませんね。私のところにも、さまざまな注文がきますよ。「中世ヨーロッパ風の建物を作りたい」とか「アーリーアメリカンスタイルの建物を建てたい」という要望を受けたりします。

でも、街には街の中の雰囲気というものがあって、その環境の中で許された特徴を出すことが大切だと私は考えています。街のコンセプトに合わない異質なものをぽぉ~んと創るというのは、商業的にはありなのかもしれませんが、街としてはちょっとどうかな…と思います。

そんな意識改革には時間がかかるでしょう。でも、湯津上村や清水港の人たちも、十年かけて同じ気持ちで街を見るようになり、今では放っておいても(街の景観に合わない)変なことはだれもしないくらいまで浸透しました。

「ビレッジ310」との南北軸に期待

水戸の街は、東西方面への人の流れが一般的で、南北の流れというか、軸が必要でした。現在、新しい市民会館の計画が泉町で進んでいますが、水戸芸術館と水戸京成百貨店を結ぶ人の流れ(モール)を作り出すことは非常に重要だと考えています。モールという空間は世界中にたくさん例がありますが、ついこの間言ってきた金沢にも、大通りから路地に入ると、その先に広場があって人が集まる空間があり、その広場からはふたたび路地があって、さらに奥の道に抜けていくといった、楽しい空間があります。センスのいい小さなお店がたくさん建ち並ぶ繁華街になっていて、なんとなくちょっと上品にした下北沢、みたいな雰囲気があります。若い人も多く、上手に世代交代もされていて、そういう路地文化も参考になります。

こういう工夫というか、おもしろさが水戸にも欲しいですね。泉町会館からビレッジ310への歩行者の流れが加わって、この地域に新しい人の回遊が生まれてくると、水戸の街もおもしろくなってきますね。(談)

「水戸街情報マガジンIZM 9月号より抜粋」

パーク株式会社(PARK INC.)
http://www.park104.com/index.html

分類 集会場
建設地 茨城県水戸市
構造 W造、2階建
延床面積 171㎡
竣工 2015年3月
業務内容 改修工事・監理
設計担当 佐藤昌樹
中村亮太